司法書士の業務の中には、回収処理(権利証等の返却業務)という業務が存在し、各事務所によって多少やり方は違うものの概ね同じようなやり方で行われます。
私が司法書士事務所に初めて勤めたときにやった業務はこの回収処理なのですが、訳がわからずとても苦労したことを覚えています。
マニュアルが存在しない事務所も多いと思いますので、基本的な考え方や返却する書類などをまとめてみますので、司法書士業界に入ったばかりの方は参考にしてみてください。
この記事を読めば、事務所内で先輩に怒られずに回収処理をバッチリこなすことができます。
では、スタートです。
回収処理とは
回収処理とは、案件を受任し、登記申請等が完了した後にお客様や関連業者等へ使用した書類等を返却する業務のことを指します。
(ちなみに呼び方は事務所によって異なりますのでご注意!)
司法書士事務所に入ったばかりの新人は、この回収処理の業務と書類預かりの業務をよくやらされるのですが、回収処理がまともにできないと使えない奴扱いされて、申請書類の作成や取引先との打ち合わせなどをさせてもらえないなどの話をよく聞きます。
実際に私も補助者(事務員)には回収処理から業務を教えて、徐々に仕事を覚えていってもらうようにしています。
なぜ、この回収処理の業務から教えるのかというと、
- 案件が完了した後の整理業務なので、その案件を処理するのに必要であった情報が全て詰まっており、業務を覚えるのに一番分かりやすい
- 比較的に時間にゆとりを持って処理できる業務である
- 間違いがあっても、郵送さえしてしまわなければ修正ができる業務である
このような理由から回収処理業務を初めに教えるのです。
回収処理の主な返却先
では、具体的な話に移っていきます。
ちなみに今回想定している登記申請は、以下の5連件です。
- 名変
- 抹消
- 移転
- 保存
- 設定
まず、回収処理を行うに当たって、書類の郵送先を確認します。
主な書類の郵送先は以下の通りです。
- 買主
- 設定銀行(融資銀行)
- 売主
- 抹消銀行
このうち、1と2は絶対に郵送書類があります。
(新しく権利を取得して登記識別情報通知が発行されているので当然ですが)
逆に3と4は権利を失う立場の人たちですので、決済毎に返却するか否かバラバラです。
決済に行った司法書士が返却の有無を確認していると思いますので、必ず確認をしましょう。
各当事者に郵送する書類
「買主に郵送する書類」
- 登記識別情報通知(移転、保存)
- 登記完了証(移転、保存)
- 登記事項証明書(完了後謄本)
- 住民票
- 住宅用家屋証明書
- 抵当権設定契約書の移し(またはお客様控え)
- 固定資産評価証明書
「設定銀行に郵送する書類」
- 登記識別情報通知(設定)
- 登記完了証(設定)
- 登記事項証明書(完了後謄本)
- 抵当権設定契約書
「売主に郵送する書類」
- 登記完了証(名変、抹消、移転)
- 登記事項証明書(完了後謄本、写し)
- 預かった登記済証、登記識別情報通知
- 住民票
- 抵当権抹消書類一式
「抹消銀行に郵送する書類」
- 登記完了証(抹消)
- 登記事項証明書(完了後謄本、写し)
おおよそこんな感じで振り分けて郵送してあげると思います。
回収処理は慣れれば簡単な作業ですが、お客様に渡す大切な書類です。
絶対に破損・汚損等がないように、また綺麗に製本して気持ちよくお渡しできるようにすることが大事です。
特に買主の権利証などはほとんどの事務所で表紙をつけてあげていると思います。
たまに書類の綴じ方がものすごく雑な時もありますので、気をつけてあげたほうがいいと思います。
各当事者に郵送する際の郵送方法
最後に郵送方法を確認しておきます。
買主、設定銀行→レターパック赤、書留郵便、その他追跡が可能な郵送方法
売主→まだ使用可能な権利証がある場合→買主、設定銀行と同様の郵送方法
→使用可能な権利証がない場合→レターパック青、普通郵便
抹消銀行→普通郵便
回収処理を行う上での注意点
ここまで回収処理の返却物や郵送方法をざっと書き出してみました。
ちなみにきちんと内容を把握できていれば(決済内容をきちんと分かっていれば)、法務局から登記完了書類等が事務所に返却されてきていなくても振り分けができるようになります。
逆に法務局から登記完了書類一式が返って来ていないと何を返却していいかわからないという方は、まだ登記のルールについての理解が足りていないはずです。
例えば、名変の登記完了証は何通発行されるのか、登記識別情報は誰に何通発行されるのか等々、登記には曖昧なルールは存在しません。
全てきちんとしたルールの基に発行されて書類が返って来ています。
ですので、自分なりの理解を深めるために、登記内容から何が返って来ているべきなのかきちんと考えてから回収処理に取り組んでもらえると、その後の業務への理解が深まるはずです。
この記事を読んで普段の業務に活かし、早く登記申請書の作成やお客様との打ち合わせなど、案件を任せられるようになるように頑張ってみてください。
今日はものすごくマニアックなネタでした。
これでおしまいです。
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